2007年02月19日

アメリカ巡回 丸沼芸術の森所蔵 アンドリュー・ワイエス展レポート

                           2 / 4 / 2007 中村
初回開催館 Cincinnati Art Museum(オハイオ州)
開催期間 2/3/2007〜5/6/2007

2007年1月21日、アメリカ、オハイオ州シンシナティ美術館でのワイエス展準備のために渡米した。成田―アトランタ―シンシナティは途中乗り継ぎ時間も含めると約18時間の旅だった。展覧会のオープニングまでの10日間を美術館で過ごす。
初めての海外展覧会でいったいどのような展開になるのか見当もつかなかったが、開催期日が迫るにつれて、シンシナティ美術館とのメールのやり取りが頻繁になり、段々現実味が増して気分的には期待が膨らんでいた。渡米前にシンシナティ美術館の修復家Cecile Mearさんが来日され、約2週間丸沼芸術の森やヤマト運輸など毎日一緒に作業をしたこと、シンシナティ美術館のBonadies副館長と学芸員のKristinさんが2003年に丸沼芸術の森を来訪されたこと、姫路市立美術館でのワイエス展へお連れしたことなどが功を奏したのか、今回美術館側の対応は予想以上にすばらしいものであった。

<オープニング>
シンシナティのワイエス展オープニングは、副館長が25年間勤めていて初めて経験した、と言われたほどの盛大なものとなった。2日間のオープニングで1300人という大勢の招待客で、本当にそのスケールの大きさには須崎社長ご夫妻も驚いて大変感激されていた。アメリカでのワイエスファンは熱狂的だと館長のAaron Betsky氏がスピーチで話しておられたがこのオープニングで実感した。初日、館長のあいさつの後、須崎社長、その後ワイエスの孫・ヴィクトリア・ワイエスがスピーチをした。社長のスピーチの内容はワイエスを入手したいきさつ―「若手芸術家支援という大きな目的のため」を主題としたものになった。皆さんが、素晴らしいコレクションのオーナー・須崎社長に一目会いたいと次々握手を求められ、ご夫妻は息つく暇もないほどだった。本当に歓迎されていることを実感されたと思う。
初日はサックス、翌日はピアノソロ、展示会場ではバイオリン演奏があり雰囲気を盛り上げていた。展示会場では初日、昼は学芸員のKristinさん、夕方はヴィクトリアがギャラリーツアー、2日目、ヴィクトリアは4回も講演をこなした。エネルギッシュで楽しいトークに聴衆は魅了されたようだ。

<美術館のスタッフたち>
開梱、展示、オープニングと多くの勉強をさせていただいた。 副館長とKristin さんの指示により、スタッフは誰もが丁寧に、どんな要求にも喜んで対応してくれたのは驚くほどであった。いつの間にかほとんどのスタッフが私の名前を覚えて、必ず挨拶に名前を呼んでくれたのは本当にうれしかった。
それにしても、美術館のスタッフはよく働く。展示作業は大変念入りで、作品のチェックは2人の担当者が3日かけてやり、照度調整でも3日かけていた。1点1点照度計を使ってくまなく測る。結局展示作業だけで10日間かけた。ヤマト運輸の梱包は丁寧だと感心してくれたのは、身内が誉められているようで嬉しかった。

滞在中、送別会と誕生会がCuratorial division(学芸課)、Registration division(作品記録関係課)であり、お昼に皆が集まりベーグルやケーキ、飲み物でミニパーティがあった。隣の課に移るだけでも送別会をして、カードをあげたり、花束や贈り物をあげたりしていて、いかにも楽しみ上手なアメリカ人だと感心した。もうひとつ大きなイベントがあった。1/26 ,Holiday Partyといって、約200人のスタッフのための冬のパーティだ。クリスマスには皆それぞれ家族と過ごすので出来ないから、毎年1月にするという。夏には広い中庭でガーデンパーティをするらしい。パーティはけっこう派手だ。バンドがあって、ダンスを踊り、仮装した人たちもいた。伴侶や恋人、友人いずれか一人は同伴してもいいというので、人数は300人以上いたという。 なにしろ大きな美術館なので、ボランティアや委員会の会合もどこかの部屋であり、常設展や企画展に来る観覧客もいていつも賑やかだ。 私にもいつもお誘いの声がかかるので、滞在中とても楽しく過ごすことが出来た。

<メンバーと呼ばれる人々>
日本の公立美術館とは違い、アメリカではメンバーと呼ばれる人たちの寄付で成り立っている。このワイエス展では、3回のレセプションがあった。1回目はこの展覧会へ特別に出資したスポンサーと呼ばれる人々36名、2回目は常に多額の寄付金を寄せてくださるファウンダーと呼ばれる人々250名、3回目はメンバーと呼ばれる人々1000人以上。美術館に集まる人たちを見ていると、自分たちの好きな場所にしようという雰囲気が感じられる。どの表情も明るく、穏やかだ。この美術館は自分たちが支えているのだという自信、何か出来ることに参加して、美術館に貢献したいという前向きな気持ちを感じる。アメリカの税制で美術館に寄付をすると税金が安くなるので、大きな企業は特に寄付をしたがるという。そして自分の名前を美術館が残してくれることにステイタスを感じるのだそうだ。

<ボランティア> 
美術館は自分たちのもので、何らかの形でかかわりをもち、自分の精神性の啓発の場として、あるいは芸術を通した社交の場として、人々が美術館をとても身近なものとしてよく訪れていることに感銘を受けた。日本の美術館は公的機関に頼りすぎて、観客は受身でいるような気がした。
毎日のように図書室や学芸員室では誰かしら調べ物や、本の修復など手伝っているボランティアたちがいる。年配の女性たちは自分の好きな絵のお手伝いをすることはとても楽しみなので、週1回〜2回通ってくるという。丸沼芸術の森ワイエス展でももっとボランティアの力を引き出して、皆さんに達成感を感じていただけるようなものにしなければならないと真剣に考えた。ワイエス展でギャラリーツアーをするボランティアはDocents と呼ばれ140人もいるという。数回勉強会を開き、その中の1回目に私は丸沼芸術の森と
須崎社長がワイエスを入手したいきさつについて話した。皆さんの最大の関心事は「一体何の目的でこれほどのまとまった作品を入手したのか」ということのようだった。

<日本人>
ここにいる間に一度も日本人に会わなかった。オハイオ川を挟んだ対岸はケンタッキーで、そこには全米でもっとも大きなトヨタ自動車工場があり日本人もたくさん住んでいるらしい。それにしてもメンバーになっているらしいのに誰も来なかったことに、ここでの日本人の存在が気になった。メンバーの中には日本びいきがたくさんいらして須崎社長はあいさつに忙しいほどだった。 地元の新聞にワイエス展が大きく取り上げられ、コレクションのオーナーは、日本の実業家で丸沼芸術の森代表の須崎勝茂氏と紹介されていたので、目にした人たちが訪れてくださることを願っている。
posted by blueberry at 23:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/3380644

この記事へのトラックバック